①相続分の指定
遺言によって相続分の指定がなされた場合は、金銭債権以外の財産(不動産、有価証券など)が各相続人の共有状態となる。
簡単に作成できるものの、相続財産に不動産などが含まれる場合は、いずれ相続人間において遺産分割協議を行い財産の帰属を定めることが必要となる。
文例
遺 言 書
遺言者AAは、次のとおり各相続人の相続分を指定する。
妻 AB 8分の5
長男 AC 8分の2
長女 AD 8分の1
平成〇〇年〇〇月〇〇日
遺言者 AA ㊞
②遺産分割方法の指定
遺言で遺産分割方法を指定することができる。
この場合は、相続人間の遺産分割協議を経ることなく、相続開始と同時に、指定の相続人に指定の財産が帰属する。
財産の特定を要するため自筆に少々手間がかかるが、相続人の事務負担を軽減することができる。
文例
遺 言 書
遺言者AAは、以下のとおり遺言する。
1.遺言者は、遺言者の有する下記の財産を、遺言者の長男ACに相続させる。
(1)土地
- 所在 札幌市〇区〇町〇丁目
- 地番 〇番〇
- 地目 宅地
- 地積 〇〇・〇〇平方メートル
(2)建物
- 所在 札幌市〇区〇町〇丁目〇番地〇
- 家屋番号 〇番〇
- 種類 居宅
- 構造 〇〇
- 床面積 〇〇・〇〇平方メートル
2.遺言者は、遺言者の有する下記の財産を、妻のABに相続させる。
(1)預金
①〇〇銀行〇〇支店普通預金口座
- 口座番号〇〇
- 口座名義 AA
②××銀行××支店普通預金口座
- 口座番号××
- 口座名義 AA
(2)遺言者が死亡時に所有する現金
3.遺言者は、次の者を遺言執行者に指定する。
- 住所 〇〇
- 氏名 〇〇
- 生年月日 昭和〇年〇月〇日
4.付言
(遺留分減殺請求権を行使しないことを期待する旨等)
平成〇年〇月〇日
遺言者 AA ㊞
③遺言による信託
親亡き後の知的・精神的障碍者や、配偶者亡き後の認知症高齢者の扶養等のために、遺言により、他人(家族、後見人または第三者)に財産を信託して受益者を配偶者や子に設定する。
そうすることにより、扶養者等の死後も安定した福祉を提供することができる。
文例
遺 言 書
遺言者AAは、以下のとおり遺言する。
1.遺言者は、以下のとおり信託する。
(1)信託の目的
受益者の生活の安定を図るため、その生活・療養に必要な資金の給付を行うこと。
(2)信託財産
別紙信託財産目録記載のとおり。
(3)信託期間
受益者もしくは受託者全員の死亡又は信託財産の消滅のときまで。
(4)受託者
- 住所 〇〇
- 氏名 AB
- 生年月日 昭和年月日
上の者が受託を引き受けない場合、死亡した場合、又は病気もしくは障害により受託することができない場合は、次の者を受託者とする。
- 住所 〇〇
- 氏名 AC
- 生年月日 昭和年月日
(5)受益者
- 住所 〇〇
- 氏名 AD
- 生年月日 昭和年月日
(6)管理の方法
受託者は、本信託業務を信託の目的に従い善良な管理者の注意をもって行うものとする。
(7)受益者に対する支払い
毎月末日に金20万円を限度として、受託者が相当と認める額の生活費を受益者に支払う。
(8)信託期間満了時における信託財産の帰属
受益者に帰属する。ただし、受益者の死亡により信託が終了するときは、残余財産は〇〇に帰属する。
(9)信託の変更
受益者と受託者の合意により本信託の内容を変更することができる。
(10)信託報酬
無償とする(有償の場合は「年◯円とし、毎年◯月に信託財産から支払いを受ける」等)。
2.前条により信託を設定した金融資産以外の財産をABに相続させる。
平成〇年〇月〇日
遺言者 AA ㊞