講師山野目章夫先生によって多くの論点が提示された昨日の研修。その中で、個人的におもしろかった細かい論点。
細かすぎてきっと誰も気にしていない論点。

買戻しに関する規定

民法581条1項
売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しは、第三者に対しても、その効力を生ずる。
この条文、受験時代から変だと思って読んでいました。
売買「契約」と買戻し特約の「登記」を同時にするシチュエーションが、全く浮かびません。
もちろん先例により「買戻特約の登記は、売買登記と同時に、別個の申請書によるべきである。」(昭和35.3.31民甲712局長通達)とされているので、特に実務において悩む部分ではないです。
だからみんな間違いに気付いてはいるけど放置されたんだろうな、 くらいに考えていました。実務に支障がないのにここだけ法改正するのもアレだしね。
でも、ちゃんと理由があったんです。
いや、間違いであることに間違いはありませんけど。
立案者がフランス法の研究者で、フランス法の法体系による文言をそのまま日本の法律に使ってしまったようです。
登記制度比較
日本 ドイツ フランス
編製 不動産ごと 不動産ごと 契約書ごと
登記の効力 対抗要件 効力要件 対抗要件
日本やドイツは、登記記録を不動産ごとに編製しますが、フランスは不動産売買契約書などの契約書ごとに編製します。
フランスでは登記の対象が不動産そのものではなく契約書だから、契約書の原本=登記記録ということになるんでしょうね(たぶん)。
登記官による再入力の手間がない(たぶん)のは合理的ですが、権利関係が錯綜した不動産を扱うのは大変そうです。フランスの法律家は逆のことを思ってそうですけど。

謎が解けた…?

というわけで民法581条1項は、起草時にドイツ民法とともに影響を受けたフランス民法の名残りであるとのことでした。
なるほど、謎が解けた! と納得して帰りました。
が、いま再度条文を読み返してみると、フランス登記制度をもってしてもやっぱり変な言い回しですね…契約と同時に登記…?
(9/24第25回 不動産登記研修会「山野目章夫先生による不動産登記・司法書士制度に関する研修会」備忘録①)