遺産分割協議証明書とは
相続による所有権移転登記のお話です。
世に『遺産分割協議証明書』という便利なものがあります。
遺産分割協議書は本来共同相続人全員が一通の協議書に記名押印すべきものですが、それを作成するには共同相続人全員が一堂に会するか、一通の遺産分割協議書を郵送によりやり取りしなければなりません。
そこでその手間を省くため、共同相続人各自が別個に、同じ内容の書類への記名押印をもって遺産分割協議の内容を証明するのが『遺産分割協議証明書』です。
次の相続について、その遺産に属する後記不動産は、共同相続人全員による遺産分割協議の結果、〇〇が相続により取得したものであることを証明します。被相続人の最後の本籍 ~
被相続人の最後の住所 ~
被相続人の氏名 ~
相続開始の日 平成〇〇年〇〇月〇〇日
不動産の表示(省略)
平成〇〇年〇〇月〇〇日
住所 ~
氏名 ~(実印押印)
これは共同相続人の全員分が揃うことで遺産分割協議書と同一の効力を有するものになりますから、一人分でも欠けていたら遺産分割協議が成立したということができず、不動産の名義変更は受けることができません。
古い遺産分割協議証明書を発見
先日お受けした案件で、25年前の遺産分割協議証明書と印鑑証明書が保管されており、かつ相続未登記というものがありました。
この遺産分割協議証明書の作成には司法書士が関わっているようでしたが、なぜ登記がされないままとなっていたのかはわかりません。
全員分が揃っている場合
全員分の遺産分割協議証明書と印鑑証明書が揃っている場合。
この場合は、その証明の日付や印鑑証明書の発行日がいくら古かったとしても、問題なく、それらの書類を提出して相続による所有権移転登記を受けることができます。
遺産分割協議証明書と印鑑証明書についての有効期限が特に定められていないからです。
登記の申請は所有権の取得者またはその相続人が行います。
一人分が欠けている場合
一人分について遺産分割協議証明書と印鑑証明書が欠けており、他の共同相続人の分は揃っている場合。
この場合はその欠けている一人が改めて同一内容の遺産分割協議証明書を作成し、新たに印鑑証明書を取得することで問題なく相続による所有権移転登記を受けることができます。
遺産分割協議を行った日は変わりませんが、証明日はいつであっても構わないからです。
一人分が欠けており、欠けた書類の作成者が遺産分割協議後に死亡した場合
一人について遺産分割協議証明書と印鑑証明書が欠けており、欠けた書類の作成者が遺産分割協議の後に死亡した場合。
もはや当事者の作成による遺産分割協議証明書も印鑑証明書の取得も無理です。
このような案件をお受けしたところ…遺産分割協議後に亡くなった方の相続人が遺産分割協議証明書を作成し、相続人の印鑑証明書を付けることで相続による所有権移転登記を受けることができました。
次の相続について、被相続人Aの死亡により相続が開始したところ、その遺産に属する後記不動産は、平成〇〇年〇〇月〇〇日共同相続人全員による遺産分割協議の結果Bが取得したということについて相続人兼被相続人Bが合意していたことを証明します。被相続人の表示
最後の本籍 ~
最後の住所 ~
氏名 A
相続開始の日 平成〇〇年〇〇月〇〇日
相続人兼被相続人の表示
最後の本籍 ~
最後の住所 ~
氏名 B
相続開始の日 平成〇〇年〇〇月〇〇日
不動産の表示(省略)
平成〇〇年〇〇月〇〇日
相続人兼被相続人の相続人
住所 ~
氏名 ~(実印押印)
特にこれに当てはまりそうな先例は見つからなかったものの、包括承継人が証明しているのだからいいだろうと申請したところ、全く問題なく登記が完了したというお話でした。